〔原忠順宛内田孝太郎意見書〕 / 〔A written statement from Uchida Kōtarō to Hara Tadayuki〕

置県御創立ノ際且ツ医員警吏等ノ不足ヨリ遂*ニ*充分ノ預防ヲ
尽ス能ハス或ハ届出サル患者ヲ看破セサルモアリ或ハ頑民トモ
避病院ノ何タルヲ知ラサルヨリ入院ヲ厭ヒ死者アルモ窃*ニ*埋
葬スル等其数枚挙*ニ*暇アラサルヘシ頃日島尻地方ヲ
巡廻セシ田野熾ノ通報*ニ*ヨレハ昨年ノ虎列剌病ニテ斃
ルヽ者一間切*ニ*多キハ五百人少キモ四五十人ニテ合計凡ソ四千
人ノ夥多*ニ*至ルト而シテ各間切*ニ*医員ノアラサルヨリ其療治
ヲ受ヘキ術モナク米ノ粥及ヒ泡盛*ニ*唐辛一二粒ヲ入レ服
薬シ或ハ剃刀ヲ以テ吾脊及ヒ腕等ヲ割リ其血ヲ呑ミ或ハ灸
治シ他*ニ*治療アルヲ知ラスト呼嗚之ヲ聴テ惨歎セザルハ蓋
シ人ニアラサルナリ〓医*ニ*非サレハ発病ノ原因*ニ*至テハ其来ル処ヲ
詳ニセスト雖トモ聊カ〓テ聞クコトアリ虎列剌病ノ毒タル冷
気*ニ*当リ埋没セシ毒モ暖気ノ候*ニ*向ヘハ発揚空気中*ニ*
飛散シテ人身ノ鼻口中*ニ*入リ或ハ外襲病毒ノ外更*ニ*体中*ニ*於
テ感応スル者アルカ為メ是*ニ*於テ乎始テ病ヲ発起スルニ
至ルト何レモ皆暖気ヨリ暑気ノ候*ニ*向ヒ増植スル者ナレハ
本年亦必ス該病流播ト見做サヽルヲ得ス而シテ該病ノ迅速ナル
ハ前陳スル如ク病毒浸入ノ前*ニ*於テ之カ予防方法等ヲ講セサ
レハ一且臍ヲ噛ムモ及フヘカラス別シテ本県ノ如キハ他府県
ト異リ前以テ医薬ノ用意アラサレハ患者ヲ傍観スルノミ
ナラス亦将サニ昨年ノ惨状ヲ顕出スルニ至ルヘシ伏シテ願クハ
早ク英断ヲ以テ避病院設立ノ用意ト該病預金防ノ薬剤
トヲ買求シ以テ他日ノ凶報*ニ*備具セラレンコトヲ乞ナリ詩*ニ*云ク
アリ天ノ未タ陰雨セサルニ当リテ彼桑土ヲ採テ以テ牅戸
ヲ調繆スト夫之等ノコト歟請フ閣下幸*ニ*文ノ迂拙ヲ咎
メス諒察焉
明治十三年一月廿七日 九等警部内田孝太郎 九拝
沖縄県令鍋島直彬殿代理
少書記官原忠順殿

最終更新日 / last updated date
2020-03-27

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『〔原忠順宛内田孝太郎意見書〕』原忠順文庫HA006(琉球大学附属図書館所蔵), https://shimuchi.lib.u-ryukyu.ac.jp/collection/hara_tadayuki/ha00601